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「九州の山なら、やはり祖母・傾山群へ」と力を込めて語るアルピニスト(登山家)は少なくない。宇目町の主峰・傾山は、標高1,605m、さまざまな緑が織り成す原生林に覆われ、上方にはそそり立つ岩壁群をいただき、下方には清冽な渓谷を持つ、剛柔を兼ね備えた魅惑の山だ。
大分県三重と緒方、宮崎県日之影、そして宇目にまたがる傾山。北に由布・鶴見岳、北西にくじゅう連山、西に阿蘇山・根子岳、南に夏木山を望む、まさに九州アルプスの主峰なのである。

傾山から県境稜線を、新百姓山(1,273m)、桧山(1,297m)方面へたどり、大鋸、小鋸の尾根を経たところに腰をすえるのが夏木山(1,386m)。祖母・傾山群と宮崎県の大崩山群の接続点の役割を担っていることでも有名だ。宮崎県の北川へとそそぎ込む桑原川は、この夏木山に源を発している。

夏木山の自然美は、とても言葉では言い尽くせない。春にはアケボノツツジの緋色の花弁を、夏にはまばゆい陽光を、そして秋には黄金色に染まった紅葉を揺らぐ水面に浮かべている。それらは、悠久の時を超えて、雄大に神秘的に育まれてきた。天然のままで、人に媚びることなく、孤高を守り続けてきた、まさに本物の自然が、ここにはあるのだ。

夏木山に源を発し、上流の観音滝を起点に下流約8kmに及ぶ藤河内渓谷。その渓谷を形づくる巨大な一枚岩を、桑原川が長い年月をかけて刻んだ奇観は驚くばかり。万緑に包まれた中、透明な美しさをたたえた渕や、おう穴群が続く。春は新緑、夏は冷たい天然水、秋は紅葉、そして冬は山水画のような美しい景観が―。ここには、すべてが純粋に生きる、感動の世界がある。
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